料理で町は元気になる。過疎地に80万人の観光客を呼んだ奇跡のシェフ

TRiP EDiTOR編集部
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2017/08/22

かつては富良野観光の通り道でしかなかった「美瑛町」。この町が息を吹き返したのは、ある一人のシェフがきっかけでした。「テレビ東京『カンブリア宮殿』(mine)」は、放送内容を読むだけで分かるようにテキスト化して配信。当初は「こんな田舎にフレンチレストランなんて…」と大反対していた町の生産者たちも、今は負けてはいられないと新しいブランド野菜を生産するまでに。町の人の心まで激変させたラパンフーヅ・中道博社長とは、一体どのような人物なのでしょうか? 

絶景の町が激変~客殺到の美味しい新名所

北海道・旭川空港から車でおよそ20分。富良野の手前にある美瑛町(びえいちょう)。

美瑛といえば真っ先に思い浮かぶのが北の大地を象徴する光景だ。作物によって色を変える丘陵地帯の畑と、その中を通る通称「パッチワークの路」。圧倒的なスケールの花畑が大地に模様を描く「四季彩の丘」。トラクターで見物もできる。町のはずれには「青い池」という神秘的なスポットもある。温泉成分を含んだ湧き水と鉱物を含んだ川の水がここで出会い、独特の色を生み出すと言う。

こうした美しい景勝地があるのに、かつて美瑛は富良野観光のついでの立ち寄りスポットに過ぎなかった。

しかし今は違う。客の流れを変えたのは10年前にできた美瑛選果」。施設の一角にはとんでもない長さの行列が、建物の中から伸びていた。行列客のお目当ては凍らせたイチゴと氷、シロップをミキサーにかけただけのイチゴジュース(360円)。シンプルな味が大人気となっている。

行列の隣には美瑛の誇る野菜を集めた直売所選果市場」もあり、こちらも大賑わいだ。並ぶのは「JAびえい」が厳選した折り紙付きの野菜ばかり。値段はやや高めだが、熱烈なリピーターがついていて飛ぶように売れている。

そして建物の奥には、一日中、予約でいっぱいの人気店が控える。レストランアスペルジュ」。気さくな雰囲気だが、ミシュランの一つ星を持つフレンチの名店だ。

売りは美瑛の野菜をふんだんに使った地元ならではのメニュー。名物は茹でたてのアスパラだ。オリーブオイルを振りかけ、そのままお客の元へ。メインは美瑛産の豚料理。地元のブランド豚で、柔らかな身と口どけのいい脂身が特徴。たっぷり厚切りで、肉の旨みを味わえる。ランチコースは3960円。

いずれも美瑛特産の素材の良さがダイレクトに伝わってくる料理ばかり。その美味しさが、これまで通り過ぎていた観光客を町に引き寄せているのだ。


「美瑛選果」をきっかけに、通過する町から目的地に変わった美瑛に、さらに人を呼び寄せる施設が4年前に誕生した。オーベルジュビブレ」。オーベルジュとは、宿泊施設のついたレストランのこと。その客室からは窓いっぱいに大雪山絶景を独り占めだ。

客にわざわざ足を運ばせる料理は、まずは丸ごとの人参。これを客に見せて、さらにハーブ水をかける。雪の下で一冬寝かせて糖度をあげた自慢の人参のローストだ。メインはエゾシカ。ヒノキの葉と一緒に炭火で炙って香りを付ける。

ただ美味しいだけではない。ここは驚きや感動が料理で体験できる店なのだ。その「特別な体験」は朝食でも用意されている。それが自家製のクロワッサン。まず客が席に着いたところで焼き上げる。焼き上がったらスタッフはダッシュ。釜から出して10数秒後には客の元へ届ける。

食の力で客を引き寄せ大きく様変わりした美瑛年間の観光客は165万人と10年前に比べ5割も増えた

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